Sさんは、外科系のドクターである。何度もイベントでツアードクター役を快諾してくれた彼は、やはりサイクリストだから、レスキューカーに乗るより、自転車に乗っているほうがいい。そこで彼のランドナーのうちの1台は白い塗色となった。フロントバッグもサドルバッグも白い帆布製で、赤十字のマークが入っている。救急自転車である。バッグの中には、消毒薬などはもちろん、救急用の医療器具も入っている。そればかりか、かなり重めの自転車の工具もたくさん入っている。
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怪我してしまった人だけでなく、人の壊れた自転車まで面倒を見てくれる。なにしろドクターなので手先が器用なのであるが、それ以上に彼の手に宿っている意思は、「治す」というスピリッツである。そういう具合に、人はいつのまにか旅のスタイルを身につけるようになってゆく。本人が意識していないのに、スタイルができあがっている場合もある。別にスタイルなどなくても旅は可能だと思うけれど、やっぱり自分流の何かがあることは、旅を、仲間を、楽しくさせてくれること間違いなしだ。