動力を持たない飛行物体、グライダー、ハンググライダー、パラグライダー、スキーのジャンプなどはすべて向かい風に乗って飛びます。追い風には乗れません。失速して落ちてしまうのです。ところが、たいていの親や先生は子どもに追い風を送ろうとします(後押しをするということです)。子どもの側に前に進もうという心の準備ができていればこの後押しは有効ですが、そうではない場合、いきなり後ろから押されると、足がすくみ、押し出されまいと抵抗します。そういうときにはひとまず力を緩めて様子を見るべきなのですか、大人はついつい気ばかり焦って、さらに強い力で前に押し進めようとします。すると子どもはどうなるのでしょうか?大人の力にはかなわないので、進みたくもない方向にズルズルと押し出されてしまいます。行きたくもないのに塾に放りこまれ、やりたくもない宿題を大量にやらされる。受けたくもないテストを受けさせられ、結果が悪いとなじられる。やりたくないことを無理やりやらされてもいい結果が出るわけがありません。無意味な挫折感だけが募っていき、子どもの生命力はどんどん低下していきます。こんなことは誰のためにもなりません。決してやってはいけません。私の塾には追い風も向かい風も吹いていません。そのクラスでいちばんできる子が飽きないペースで問題を与えつづけるだけで、彼らの出来不出来には表面上、無関心を装っています。できてもほめませんし、できなくても叱りません。彼らも私に頼ろうとはせず、授業は淡々と進みますが、空気は常にピリピリと張り詰めています。その緊張感は私がつくり出すのではなく、彼らがかもし出すのです。どちらかと言えば、私のほうがその緊張感に後押しされて気持ちよく授業をやらせてもらっているという感じです。そういう授業が三年、四年、五年、六年と続きます。入試を意識させるのは、小六の十月あたりからです。その時期から私は彼らに強烈な向かい風を送りはじめます。