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意思決定の責任

不確かさに冷静に対応し、思ヽい切った意思決定を時機を失せず行うのが医者の最も重大な責務なのです。いくら豊富な医学知識をもっていても、意思決定のできない医者はすぐれた医者だとはいえませんし、どんな名医も自分の病気の治療はできないといわれるのは、知識がいくらあっても自分自身の生命にかかわる事態については冷静な意思決定が難しいからです。医者に多かれ少なかれカリスマ的要素が必要とされるのも、そのためです。そうかといって、いきなりはじめから直観と経験だけを頼りにむやみに決断ばかりされては困りますから、可能なかぎり合理的な、客観性の高い情報の上に立って、できるだけ少数の選択肢にまで「科学的」に追いつめた上での意思決定でなければならないことはいうまでもありません。求めればいくらでも情報を集めることのできる今日ですが、患者のためというよりは医者自身のために、つまり単に学問的興味のために、それどころか意思決定の責任を回避するために、山のように情報を集めている場合がないとはいえませんし、ことに近代病院のように専門家を数多くかかえた組織では、意思決定の責任をたやすく他に転嫁しうることが今日の医療の重大な落とし穴の一つであることも、ここにつけ加えておきたいと考えます。患者の立場からすると、医者は万能であって病気のことを何でも知っていて、迷うことなく直ちに最善の治療を選択し実施してくれること1つまり病気に対するマスター・キーの持主であることを期待します。それを期待しているからこそ、二つとない大切な生命をあずけることができるというわけでしょう。したがって、その期待が裏切られた場合には深い悔恨におそわれ、はげしい憤りを禁じえないということにもなるわけでしよう。